2016年12月05日

映画感想「キャピタリズム マネーは踊る」

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まとめ
米国の極端さは世界一ィィィィ!


アメリカには住みたくない、と、マトモな感覚の人なら誰しもが思う。犯罪率が高いとか、英語が話せないとかいう次元の話ではない。人間だからなしえられる種の歪さに支配された国家だからである。自由と平等が約束されていて、誰にでものし上げれるチャンスが与えられた国ではないのである。

学歴社会の加速化とかジニ係数の上昇だとか「格差社会」を訴える声が喧しい昨今であるが、米国に比べれば日本はぬるま湯みたいなもんである。安楽とばかりにぬるま湯につかり続けていても埒があかないし、温度をゆっくりと上げられれば気づいたら茹で上がってしまう(「釜中の魚」)わけでもあるが、マシな状況ではあるわけだ。というか、米国が酷すぎるのである。日本以上の学歴社会で1%の超絶富裕層が底辺95%を牛耳っている極端さだ。経済格差の実体と、なぜその格差が生まれるのかについて。そして、その格差を生んだ原因が資本主義にあることをムーアは訴える。

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資本主義というのは、「金を持っているものが強く(資本家・経営者>労働者)、金を持っている者は、それを元手により金を稼げる」システムが成立している社会を言うのだろう。金を稼ぐためと誰もが儲け主義に走ると弱肉強食の社会と化し、社会の恒常性が破綻するので、(儲けを度外視した)社会保障が組み込まれるのが普通である。国家を運営するコストがかさむ要因にはなるものの、国民が概ね安心して生活できる社会を醸成する上ではベターな選択と考えられる。

米国は資本主義が突き進みすぎて、破綻寸前のように思える。徹底した資本主義の邁進が原因で、皮肉にも自らが資本主義の限界を体現してしまったような段階にある。次代の米国を担うべき優秀な若い人材がこぞって金融業界に押し寄せている現実は、「稼げる業種」を選択する当然の流れでもある一方、高額な学生ローン(銀行への借金)の返済のためという切実な理由が存在する。大学では生産性の高い人材を育て排出しているのに、生産性が低いどころか破壊的な分野―働けば働くほど世の中が悪くなる―に彼らを送り出している。

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ビジネスというのは、「現金化する仕組みを作ること」だと私は理解している。資本主義では、これが当然ながら尊ばれる仕事ということになる。徹底した資本主義を邁進した米国では、社会にあるあらゆるものがこの「現金化される仕組み」に組み込まれている。「ゆりかごから墓場まで」ではないが、農業から刑務所まで、ありとあらゆるところに資本主義の根が張り巡らされている。よくもまあ、そんなこと思いつくわと感心するというか呆れるというか。「超えちゃいけないライン」を軽々と突破している非道さに背筋が寒くなる。悪魔と契約することでアイデアを思いついたとしか思えない。三途の川の渡し賃すら奪い取り、奪衣婆に衣服を奪い取られることになった亡者のために貸衣装屋を用意して徹底的に搾り取るスタイルを繭一つ動かさず淡々と行うレベル。恐ろしいのは、こうした所業を「資本主義のルールに則っているだけ」と真顔で考えていそうなその精神性である。悪いことしている自覚はあるだろうと思うが、性根のところで絶対的に冷血なのが毛唐である。自覚がないか、自覚があっても日曜日に協会に行けば赦されてチャラと真顔で考えていそうである。


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マイケル・ムーアは民主党支持の左翼だが、日本の売国奴体制批判病のサヨクと違って真に愛国者である。「いつまでもアメリカに住み続けたい」と語る彼は自国批判を行い、米国の暗部・問題点をドキュメンタリ・フィルムの形で痛棒を喰らわせてきた。本作は2009年発表であり、リーマンショックを経ての銀行に対する米国民の怒り、そしてオバマ政権への国民の期待の高さも収められている。ムーアは民主党支持なのでオバマ政権に心底、期待したであろう。

結局のところ、彼はオバマのことを「良いこともしてくれたけれど、期待はずれだった」と評するようになる。先の大統領選ではバーニー・サンダース支持だったようだが、サンダースはヒラリーに民主党代表大統領候補の座を譲ることになった。ムーアがどれほど嘆いたかは想像に難くない。そして、この大統領選はトランプが勝利するとして、5つの理由を述べた。私には、反ウォール街を謳うトランプに期待する米国民が、表立ってトランプ支持を表明しなかっただけで相当数にいたことが当選の決定打になったのではないかと思う。金融で儲ける現代資産家への妬み嫉みもあるが、マネーゲームで巨額のお金を稼ぐのは、もういい加減にしてくれやという心理である。

アメリカだけにゃあ、住みたくない…。
 
posted by ぎゅんた at 23:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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