2017年06月27日

(映画感想)「アウトバーン」




タイトルとPV動画から「麻薬の運び屋がアウトバーンを爆走するかアクション映画」を想像したものであったが、そんなことはなかった。惚れた女のために体を張る、割と真っ当なアクション映画で、その中にアウトバーンとカーアクションが混じったものだ。原題は「COLLIDE」であり、そこにはアウトバーンの意味はいささかも含まれない。本邦上映の際のタイトル改変が、中身に誤解を招くようなものであるべきではない。とはいえ、「コライド」と直訳タイトルであってもインパクトに欠けてしまうのだが。

結論から感想を述べてしまうと、本作は「平均点以上の出来のカーアクションもの」になる。濃く短く、テンポの良い内容にするために描写を端折ったのだろうが、それが説明不足となって満足感を削いでしまっているところがある。これが惜しいところで、もう少し丁寧な描写を織り込んでいれば、評価が高くなった作品であろうと思うのである。

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例えば主人公は、自動車泥棒を派手にやりすぎて米国に居られなくなったことが述べられる。その際に「自動車泥棒の天才だ」みたいな修飾もつく。しかしアッサリすぎる。この作品で主人公は持ち前のドライビングテクニックと、なにより自動車ドロのスキルを発揮して活路を切り開いて行くだけに、説明が足りない。

自動車泥棒に必要な心得や哲学、過去の経験などを相棒に説いたりするシーンが序盤に少し設けるだけでこれは回避できたはずだし、なにより主人公が活路を切り開くシーンに説得力が出て盛り上がったはずだ。主人公補正や運が良いだけで切り抜けられたかのようにみえてしまうのは良くない。

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次に、主人公の相棒である。
実はものすごく仲が良く信頼し合った間柄だったのだなあと分かるのが最後の最後である。こうした「相棒」は、とかく裏切り役に転身するものである。そうでないなら、真のバディであることの説明がないと気持ち良さがない。また、バディとして活躍するシーンがほとんどないので、物語から外れてしまっている。男同士が信頼し合ったバディであることが明らかで、(この相棒が)もっと活躍してくれれば更に良い内容になっただろう。活かせる素材を無駄にしている感が強く、惜しいのである。

ヒロインは麻薬が原因で両親と別れた設定があまり活かされなかったかなと思う程度。正統派パツキン美女で、主人公が一目惚れするのも頷けるビジュアルがよろしい。高級車と美女は合うのである(このヒロインが高級車に乗るシーンはないけど)。

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ストーリーは深く考えなくて良い。高級車は乗り捨て感覚。道交法違反や騒動に巻き込まれた一般人の行方は知ったことではない。終盤にどんでん返しもある。しかし流石に無罪放免はないと思うのだが、海外の警察はいい加減なのか。娯楽アクション映画におけるストーリーは、作品のもつ「勢い」と「興」を削がない添え物であれば良いわけで、その意味では本作のストーリーは合致している。ただ、そこで動く駒である人物たちのフォーカスの点で不足があり、それが本作を視聴しての物足りなさにつながっている。

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ケチをつけるような感想になったが、要は深く考えずにみれば良いカーアクション映画である。暴力描写は低めで、恋愛描写が(この手のジャンルにしては)丁寧で中性的なのも特徴か。美しいケルンの街並みやドイツの風景が見ることができる観光ムービーとしても楽しめなくはなさそうだ。おヒマな時の一本にオススメの作品だ。

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2017年06月26日

(映画感想)「デスプルーフ」



終わったあとに妙な達成感のある刺激の強い娯楽「洋画」。映画って、こういう味があるものよね、という懐かしさを覚える内容。しかしセクシャル描写やバイオレンスさが強いところがあるので、子どもが見たら面白さ云々よりトラウマになりそうだ。大人が見ると、毒の強い、まあいつものタランティーノ作品として楽しめる。


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洋画というと、米国のどこかの田舎町を舞台にした活劇や物語をテレビ越しに日本語吹き替えで楽しむものであったと思う。私(30代半ば以降おっさんたち)は、そうだった。そうやって、異国の文化を知ったし、憧れたし、戦慄したりしたものだ。外国は、洒落ているなあ……と感じ入ったものである。エンディング近くになる頃にはもう眠くなってしまってコロンと寝てしまうのが常であった。


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この作品は、撮られた年代を差し置いてもかなり古臭い映像になっている。監督の計算尽くのようで、そういう作品として撮ったのである。子どもの頃に感じたあの「洋画」の味がするのも、当然のことだ。倦怠で停滞した空気に満ちた米国の田舎町と若者を題材に、セクシャル、暴力、カーチェイスといった、映画ならではのストレートな描写が押し込まれている。計算尽くのノスタルジック作品であるので、大ヒットすることはないだろうし、物語の進行や映像描写がネチッこいので好き嫌いが分かれてしまう作品だ。私は楽しめたが、それは、昔の洋画の雰囲気を懐かしく思うことのできる独自の心理があったからではないかと思う。


イカす曲が流れるエンドロールが始まる。
ところで、チアガール姿の女の子はどうなったんだ?
 
posted by ぎゅんた at 13:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月19日

(書評)投資バカ


三度の飯より投資が好き!な人のことを書いた本ではありません。
バカはバカでも、悪意と嘲笑込めたバカなのです。

本書は、投資が好きかどうかは別として、銀行や証券会社のいいカモになっている不勉強で人任せな人を「投資バカ」であるとし、そんな投資バカにならないために注意してほしいことや知ってほしいことが書かれた本です。なお、著者はセゾン投信株式会社の社長ですから、結局のところ本書は、自社の顧客獲得のためのPR本と捉えばくてはならないのが普通です。とはいえ、自社の製品についてあれこれとしたセールストークはありません。業界暴露をベースとして、日本人はもっと投資の勉強をして用心深くなって下さいというメッセージが感じられる内容です。投信というのは、経済学のお友達というか、おそらく正解がないものなので、著者の考えが全て正しいことはないでしょうし、全面同意する必要もありません。

本書を好意的に解釈すると、「あなた(読者)の大切なお金を、金融商品の名のついた手数料獲得のエサに提供するべきではないし、金融マンに好き勝手にさせるべきではない。そして、資産形成はギャンブルではないと考えてほしい」という著者の親切心が全面にあります。なかなかユニークで面白い社長さんであります。資産形成に興味のある人は一読すると良いでしょう。

なお、私はこの本を読む前から、わずかな余剰金を投信積立にまわしています。30年継続したところでたいした金額にはなり得ない少額です(投資は、やはり金額の大きさがモノをいいます)が、普通預金やMRFに入れておくよりはよかろうという、一種の貯金感覚です。海外株式のETFとかも良さげなのですが、そんな種銭はありません。

余剰金をわずかなリスクと引き換えに投信積立に回すだけでも十分な資産形成になります。

これに加えて私は、病院にかかる人生から距離をおくために健康に留意しています。病気と付き合う人生への切符が、糖尿病を代表とする生活習慣病で、定期通院と薬剤を服用し続けることにかかるコストの重積はとんでもないことになるからです。投資の本には、なぜか健康であることの金銭的メリットがあまり書かれていませんが、不思議なことです。
 
posted by ぎゅんた at 14:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画以外の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月16日

(映画感想)「奪還者(原題:THE ROVER)」 人間のパートナーはやっぱり


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世界経済が崩壊して10年後のオーストラリアを舞台とした物語。

こういう設定を聞くと「マッドマックス」「北斗の拳」を想起し、肩パッドバギーにまたがったモヒカン男がヒャッハーしている荒野を想像してしまうものですが、いえ私もそうなのですが、この「奪還者」は異なります。乗り物は存在しますが、肩パッドもバギーもモヒカンも登場しません。実際に世界経済が崩壊してしまったら、どうなるのか?を監督なりに考えて反映された世界(といってもオーストラリアだけですが)が横たわるように描かれています。低予算映画ですが、虚無と荒涼をたっぷり味わる出来はお見事。

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現実的というか、いややっぱヒャッハーにはならんよねというか、そうやろなあというか。
なにしろ、登場する人間たちの多くは生きる屍というか、目的もなくただ生きているだけというか。普通、もうちょっとサバイバルのためにアクティブに活動するでしょうよという想像を裏切っての無気力具合を見せてくれます。寄る辺のない蘆(アシ)のように、ただ生きているから、惰性で生きているだけで、希望を持って生きていこうとする意志が希薄です。

略奪や強盗、小競り合いに殺人は普通に起きている世界のようですが、強欲な悪党が富を集めるために行われているわけではない様子がみてとれます。富を集めても仕方がないという、欲望の鍋の底に穴が開いちゃっている心理が蔓延しているようです。その割には、現金が米ドル優位で通用したりするあたりが妙味。競争原理の働かなくなった資本主義ってこんな世界なのかもしれない。中国企業の流入と台頭、実効的支配が始まりつつありそうな描写が実にスパイシー。

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物語冒頭で敵役の悪党どもが登場しますが、彼らにしたって、生きていくために必要だから暴力行為に出たのであって、殺しを肯定しているわけでも楽しんでいるわけでもありません。それが証拠に、主人公と対峙した時に銃で殺すわけでもなく、気絶させただけで立ち去っています。人間同士、ナチュラルに銃を突きつけあってコミュニケーションを取る世界であったとしても、ど過ぎた欲望がなければ人は、人殺しは肯定されないのかもしれません。別に彼らが慈悲深かったわけではないはずです。必要もないのに殺すのもメンドクセーってところかも。それが後に自分たちに悲劇として降りかかってくることになるのが皮肉なのですが。

一方の主人公は、次第にわかってくるのですが、人殺しを厭いません。殺してもさしてなんら精神に痛痒をきたさない平素っぷりです。「壊れている」ことが分かります。なぜ彼がそうなのかとか、そんな彼が実は、とかがこの映画に大きな含みを持たせる全てになってきます。しかし、まったくもって救いはない。すごい映画だ。
 
posted by ぎゅんた at 13:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月14日

クルミの芽生え

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近所の山で昨年秋に拾ったクルミ(おそらくオニグルミ)を、クヌギの鉢に埋めておいたところ、気づいたら芽を出して旺盛に屹立している姿を成していた。芽生えたら競争に勝つために、胚の豊かな養分を使って一気に高さを確保する作戦で、これはクヌギの芽生えに似ている。多くの種子と同じく、冬の寒さを経験して春に芽生えるタイプのようだ。

幹はこの時点で赤茶色の、幼い樹木の可愛らしさを持っていながらもガッチリとした弾力を見せる。葉っぱに触れるとフワフワと厚みを感じる。葉にうぶ毛がビッシリと生えているからであろう。

クルミは「ナッツ類」としての、食べ物のイメージが強いだろう。
実際にクルミの実の皮を剥ぎ、硬く分厚い殻を割れば、食べられるあの「クルミ」が姿をあらわす。梅干しの種でいう天神様である。天神様と異なるのは、毒を含まず、味が良く、栄養価が高いことである。そのために世界各地でクルミは人類の貴重な食料として大事にされてきたし、文化として残っている。

クルミの実は、大きな梅の実というか、小さな桃というか、独特の大きさと質量感がある。やや粘着性があり、見た目的にも美しいとは言い難い。実の皮には肌が荒れる渋があるようで素手で触るとなんとなく嫌な触感がある。この皮の部分を少し腐らせ一気に剥いでしまうと効率よく種子を取り出すことができる。厚底の靴で踏んで、皮と種子をスポッと分けるようにして種子を採取してもよい。

しかしこんな硬い殻を破って芽生えてくるとは、植物の生命力には感嘆せざるをえない。だからこそ、芽生えた後に生命力の躍動感じさせる堂々とした姿を見せてくれるのだろう。
 
ラベル:樹木
posted by ぎゅんた at 16:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 自然 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする