2016年11月22日

映画感想「この世界の片隅に」


まとめ
本年度最高傑作は間違いない。いますぐ劇場へ!

素晴らしいアニメーション映画。
平坦なドラマ展開に終始する地味な作品のくせに、なぜこうも心に深く重く響くのか。エンドロールになっても退場する観客が全くいなかったのは、やはり皆、言葉でうまく説明できようもない感動で胸が一杯になっていたからである。余韻に浸って動けなくなったのだ。この作品の感想を述べることは難しい。素晴らしいからみてくれとしか言えない。

この作品のどこが凄いのか?
…全部。と答えると陳腐だが、あながち外れた意見ではないはずだ。

作品内には、珠玉のように磨き上げられた様々なピースが散りばめられている。それらが、使い捨てされるように惜しげもなく流されていく。そのさまのなんと自然なことか。なんと贅沢な使い方であろうか。レベルの高い美術館で過ごす時間が極めて充足感に満ち溢れるように、本作を鑑賞した誰もが、お腹いっぱいになれる。さあ、早く映画館へ行こう。リピーターになっちゃいそう。
 
posted by ぎゅんた at 00:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月20日

【MOD】Perfected Doom3 ver.7

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DOOM3オススメMODのひとつであるPerfected DoomのVer.7がいつの間にか発表されていた。
結論から言うとバグや調整不足があるのでパッチ待ちが良いと思われる。


Perfected Doom シリーズとは
モンスターの攻撃力を極めて苛烈にし、バトルの緊張を大幅に改善したMOD。(バニラの)DOOM3が好きだけれども、色々と薄味なことに不満タラタラなプレイヤー向け。

UACを潰滅させるデーモンがあんな弱いわけがなかろうと、モンスターどもはプレイヤーを一発で瀕死に追い込むか即死攻撃を繰り出してくる。とはいえプレイヤーはモンスターの弱点(頭部)を攻めればアッサリ仕留められるので、一方的に殺されるわけでもない。むしろヘッドショットを安定して狙える腕があれば程よい緊張感のなかモンスターをサクサク葬っていける仕事人的爽快感を味わうことができる。ver.4がシンプルでいて完成度が高いので、初回プレイにオススメだ。インプの飛びつきとレベナントのミサイルに恐怖しよう。

ver.5で先鋭的なグラフィクスの追加+α、ver.6でセカンダリ攻撃の追加と進化してきたが、これをより発展させようと頑張った感じがするのがこのver.7である。しかしバグがあったりマシンへの負荷が強かったりと完成度はもうひとつ。アーマーの存在感が極めて大きく感じられるよう難易度がリバランスされた点は良いのだが、ソウルキューブがチートアイテム化したためにゲーム後半の緊張感がなくなる点が不満。


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Ver.7ではなにがどう変わったかについて記しておきたい。

大きな変更点
1.本編とは別のエピソード「IN HELL CAMPAIN」の実装
2.コンバットモード1/2、スペシャルアタックの実装
3.フラッシュライトの廃止(ショルダーランプに一本化)
4.グラフィクス関係のこまかな設定がオプションで可能
5.アーマーの絶大な存在感
6.落下ダメージの大幅な増加


小さな変更点
1.ダブルバレルショットガンの2丁拳銃モードが可能
2.マシンガンの命中精度とダメージの低下
3.ソウルキューブがチートアイテム化
4.モンスターに「HELL」スキンの追加
5.スプリント速度、ジャンプ力の増加
6.武器による殴打が可能
7.「アドレナリン」が「バーサーカー」と同じ効果になり困惑

プレイして気づくのは、このようなところである。
各々、思いつくままに意見を述べる。


本編とは別のエピソード「IN HELL CAMPAIN」
実によくできていて、オマケの域を超えているボリューム。

アルティメットドゥーム・ドゥーム2の雰囲気をDOOM3で再現したMAP(有名なマップのリメイクもある)が20レベルほど収録されているのだが、知る人ぞ知るPS版ドゥームのBGMが採用されている。私がドゥームに初めて触れたのがPS版だったこともあるが、あの薄気味悪い世界に足を踏み入れたときの恐怖感を味わうことができた。本編と違ってソウルキューブが存在しないのも良い。本来は追加MAP-MODだったが、クオリティが高いため採用されたようだ。

ダークアンビエントな雰囲気・急峻ある難易度・理不尽さのチャンプルーマップどもである。ジックリと攻略を楽しもう。


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コンバットモード1/2・スペシャルアタック、殴打
プライマリ攻撃/セカンダリ攻撃 に加えて、コンバットモード(過去のverでいう「ZOOM」key)時のプライマリ攻撃/セカンダリ攻撃が更に別種の攻撃になる。加えて、スペシャルアタックが存在する。また、武器を構えている時に「Melee」keyで武器で殴ることが可能。

ひとつの武器につき6種類の攻撃法があると思えば良い。が、使える攻撃かそうでないかは明暗が分かれる。ネタが思いつかないので間にあわせ的に実装したとしか思えない使えない攻撃もある。自身のプレイスタイルに合わせた使い分けは最低限可能なので、個性的な攻略法を求めるなら楽しめる要素にはなっている。

どのようなシチュエーションにも対応できる万能武器は存在しないようバランス調整がなされたようだ。例えばver.4ではマシンガンが「これ一本」的な頼もしさを誇ったが、ver.7では命中精度と火力の大幅低下によりかなり信頼性が下がっている。とはいえマシンガンに使い道がないわけではない。ひとつの武器でゴリ押しするスタイルではなく、使い分けを求めるスタイルに舵きりがなされている。どの武器を主軸に攻略を進めるか。戦況に合わせて積極的に武器の使い分けをプレイヤーにー求めるようになった。

意外にもダブルバレルショットガンが近距離〜中距離をカバーするうえ2丁モードが可能になったため侮れない武器になっている。ネタ武器ではないのである。

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Good-Bye flashlight!!
フラッシュライトが廃止され、ショルダーランプに一本化された。フラッシュライトと同様の範囲を照らし照度も高い。暗闇をフラッシュライトで照らしながら進むのがDOOM3のレベル思想であるから賛否両論あろうが、私は英断だと思う。というかこのゲーム性でフラッシュライトで攻略を強いられたらストレスで禿げ上がってしまう。


Armor is just my lifeline.
ver.7では、アーマーがある状態であればかなり攻撃を耐えられるようになった。過去、アーマー値をそっくり残したまま即死攻撃に沈んでいった主人公は、ここに来てアーマーを犠牲に生き残るチャンスを掴めるようになった。アーマーは即死攻撃に対する保険として信頼性が持てるし、落ちているアーマーシェイドがどれほどありがたい恵みに思えることか。無論、モンスターの苛烈な攻撃を一度でも受ければヘルスとアーマーは一気に減少するので過信は禁物。アーマーが僅かに残っていれば携帯ヘルスパックを使うことで立て直しを図るこことができる。二度目を喰らわないよ注意しつつアーマーとヘルスパックの回収を急ごう。


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落下ダメージ
スプリント速度とジャンプ力は上がったくせに、ちょっと高いところから落下するとダメージを負うようになった。最低でも-10は減る。ロケランとかすると被爆ダメージよりも落下ダメージが大きいことで死亡する始末。段差はマップのあちこちに存在するので不用意なジャンプ移動は避けるべきである。


「Use us!」といわれても…なソウルキューブ
プライマリが生命力吸収付きの即死攻撃、セカンダリがソウルナイト召喚に変更なし。
ソウルナイトは相変わらずオツムが弱い。
困ったのはコンバットモード2とスペシャルアタックである。

コンバットモード2のプライマリが「メガスフィア」で、ライフが瞬間的に200になる。セカンダリが「メガアモ」で、所持弾薬のフル回復。スペシャルアタックが面妖ビームアタックになっている。スペシャルアタックでモンスターを倒すとバグが出て落ちる(少なくとも私の環境では)のはさておき、メガスフィアとメガアモはいくらなんでもチートに過ぎる。サイバーデーモンを討ちヘルズゲートを封印するために主人公と力をあわせるわけなのでここまでしてくれるのも理解できるんですが。
 
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携帯できる「アドレナリン」「バーサーカー」
使用時の効果はなぜか一緒。雄叫びとともに主人公は無敵化し、ロケランより強力な鉄拳を放てるようになる。素手時のスペシャルアタックがジャブ連打なので、これさえあればヘルナイトだろうが1秒で肉片にできる。窮地を切り抜ける救済アイテム、にしては強力すぎて違和感をおぼえるところ。

バーサーカーは「HELL」の力をかりたアイテムなのでこの効果も理解できるが、基地内に無造作に落ちているアドレナリンで同じ効果が出るのはおかしい。スタミナゲージが廃止されたためのやむを得ない変更点にしてはお粗末な調整と言わざるをえない。

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こんなわけで、いいところもあるが荒いところも目に着くにが現在のver.7。
マシンへの負荷が大きいのか、プレイ中に数秒のフリーズ現象が起き、持病化してしまった。導入前にはこんなことはなかった。プレイすることでマシンにダメージが及ぶリスクがあるかもしれない。心配な人は手を出すのは保留にしておくかver.4を遊ぼう。

 
posted by ぎゅんた at 15:36| Comment(0) | TrackBack(0) | DOOM3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月11日

【試乗】アバルト 124スパイダー(FR/6MT)

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まとめ
パッケージングは魅力的ながらコレジャナイ感


NDロードスターは小排気量NAエンジンを軽量なボディに積む、いってみれば原点回帰を目指して開発された。4代目ロードスターが発売されるに至ってもなお、初代ロードスターに乗り続けているファンもいる。動力性能を欲張らずに安価に仕上げた車体でありながら、いつもの交差点1つ曲がるだけで笑顔になれる、そうした楽しさをいつも感じられる奥深いキャラクターこそが初代ロードスターの偉大なところだとされる。ここには絶対的な速さは必要とされていない。普通の速度で走らせるだけで満たされた気持ちになれるクルマであることが評価されている。

アバルト124スパイダーは、NDロードスターをベースにしたフィアット124スパイダーのホットバージョンである。中身と製造はマツダで、エクステリアとセッティングはフィアット/アバルトであるから、信頼性のおけるイタ車と考えても良さそうだ。エンジンは1.4L直噴ターボで170馬力…とくれば、単純に考えてNCロードスターと同様のスペック。重量は1130kgなのでますます似ている。NDロードスターはエンジンスペックが物足りない…と考えていた人には有力な候補となるのではないか。

インテリア・エクステリアの変更点は好みの分かれるところだが、NDロードスターと違った方向性の格好よさがあり、イタ車風味を感じさせる。飽きがくるのは早いかもしれないが、こちらの方がパッと見はイケているだろう。マツコネが標準装備であること、ドアトリムがボディカラーと同色でないこと、180km/でリミッターがかかるところは「分かってない」ポイントであろう。それ以外が優秀な商品力を発揮しているだけに残念。「車体ベースと製造はマツダなんだ。悔しいだろうが仕方がないんだ」というところか。

乗る前にリアトランクに鞄を載せたが、開閉スイッチの位置が変更されていた。NDのそれはやけに分かりづらい所にあったものだ。トランク容積の増減はなさそうであった。

久しぶりに座るNDロードスターは、低く、狭かった。足を投げ出すようなポジショニングをとると、小さな緊張感と小さな高揚感が心に湧き上がる。着座位置が低いクルマはいまや時代遅れの希少種になりつつあるが、ちょっとした非日常への古典的な演出として抗いようのない魅力に満ちてる。

既にアイドリング状態であったので、サイドブレーキを降ろしクラッチを踏み1速にギアを入れる。ホットバージョンということで、フライホイールが軽いとかクラッチの繋がりがシビアだとかあるのかと身構えたが、全くそんなことはなかった。クラッチはやや重めで反力も強め。クラッチが繋がった時の振動がハッキリ分かる。半クラ領域は広くて分かりやすいので、普段からMTに乗っている人ならエンストしないだろう。NDロードスターに比べスポーツさがより強調されたクラッチ周りである。

シフトノブはNDの球状と違って、外車によくあるガングリップ(?)タイプ。個人的にNDのあの球状シフトノブは嫌いなので、これは好ましい形状。ミッション機構はSKY-MTではなく、NCのそれを採用したとのことである。そのためであろうか、シフトフィールがあの重みを伴うショートストロークで懐かしい気持ちになった。ロッド式であるから、掌にはシフトノブを介して心地よい振動が伝わってくる。

車体はNDロードスターに比べ重くなっており、やや重厚な乗り味になっている。低速トルク型の1.4L直噴ターボは、力強い仕事をこなす。乗り味とパワー感からは、やはり予想していた通りNCの乗り味に近いものを感じた。明らかに違ったのは、交差点を曲がった後の巡航速度への加速時にあった。曲がって、2速に入れて、クラッチを繋いで、アクセルをゆるく踏む…これで加速していくものと思いきや、予想に反してパワーがなく、もたつきをみせた。124スパイダーに搭載されたエンジンは、スペック上の数値はともかくダウンサイジングターボであり、自然吸気とはやはり異なる表情があることを忘れていた。

しかし非力なエンジンではない。過給がかかる領域まで回すと分かりやすいパワーが瞬時に引き出され車体が前に蹴られ出る。この時の加速感はNC以上のものを感じるが、所詮は170馬力なので絶対的に速いわけではない。速いといえば速いが、もっと速いクルマはいくらでもある。そして、ここまでの速さがロードスターに必要だろうかと思えてならないが、これはアバルト版なのでこれで良い。しかし、それなもっとパワーがあっても良さそうなものである。NDのくせにNCをはるかに凌駕するパワーが与えられた過激バージョンという位置付けのほうがより望ましかったであろう。痛感するのは、ロードスターにパワーを求めていくと「落とし所」が極めて難しくなることだ。パワーはすぐに慣れて不足を感じるようになる。

ND-RSに60万円ほど追い銭を払うことで、装備の充実した個性的なマツダ製イタ車が手に入ることを考えれば実に魅力的なクルマである。オープンカーの選択肢が増えるのは無条件で素晴らしいことだ。ロードスターRFが登場したら、また悩ましいことになるだろう。

個人的には、ロードスターには重厚さとパワフルさ似合わないと考えているし、エンジンが小排気量ターボである点に引っかかりを覚える。私にとって最も魅力を感じるのはND-Sである。マツコネも付かないし車重も1tを切っている。しかしこのグレードはシートヒーターが付けられない点で致命的である。今後、追加されることと期待しているが、タン幌設定がないのもマイナスだ。買わない理由探しだけは立派で恥ずかしい気持ちだ。
 
posted by ぎゅんた at 00:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 試乗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月04日

オープンカーを焦がれる気持ち

NC1ロードスターと離れてもう数年が経った。その禍根は自損事故であるから自業自得であり、自信喪失と反省の意味からおとなしいクルマを、となってGHアテンザ(25Z)に乗り継いだ。GHアテンザはキャラクタ的に大人しいので、ロードスターよりも一般ウケが良く、婚活にも有効で、結婚後もファミリーカーとして活躍中である。

25Zは「スポーツ」の名が冠されているものの、実態は名ばかりのなんちゃってスポーツに過ぎない。2.5L直列4気筒のMZRは扱いやすさとエコノミー性のためにロングストロークの低速トルク型で、たった170馬力しか発揮しないレギュラー仕様。回せば迫力のあるいい音を出すが回りにくい。そして、回しても刺激に溢れたパワーはない。いまや貴重な2.5Lの6MTという点には独自の価値があるものの、自嘲的評価の域はでまい。

走行距離も9万キロ近くに達し、クラッチ周りにヘタりが生じてきている。駆動力の「緩さ」が運転していてすぐ分かるほど目立ってきた。次の車検でクラッチ盤を交換する予定だが、少しはシャキッとするかもしれないと期待しいるところだ。クルマの故障といえば電装系だが、幸いにして故障はまだ経験していない。当たりの個体だったかどうかは、なんともいえない。

総合的に判断すれば、ややマイナーなところとエクステリアデザイン、MTであることから手放したくないクルマだが、これ一台で人生を過ごしていくには不満がある。クルマ好きは経済観念がお馬鹿なところがあって、不当に高い日本の自動車維持費に目を瞑ってでもセカンドカーを所有する傾向がある。私もその例に漏れず、GHアテンザは所有しておいて、趣味に走ったセカンドカーが欲しくなっている。そうなってなお、私はいまもオープンカーに乗りたい気持ちを忘れることができない。いい車に乗るとそうでない車に戻ることができなくなるように、オープンカーの享楽を知った人はそんpことを決して忘れることができない。私は小さいクルマが好きなので、過去の経験からもロードスターが第一候補になるだろう。

ロードスターと楽しいオープンカー生活を送る上で欠くべからざるアイテムはタン幌とシートヒーターである。が、そうするとNC-RSあたりが候補にならざるをえない。しかし個体数は少ない。シートヒーター付きの個体をタン幌に交換するのが手っ取り早そうだ。
 
posted by ぎゅんた at 20:14| Comment(0) | TrackBack(0) | マツダ GHアテンザ25Z(6MT) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月03日

【書評】日本に絶望している人のための政治入門(三浦瑠麗/文藝春秋)


 久々に出逢ったすごい本。文章を読み解くことができない。頁を開き、文章を読み始めても目が文字上を通過するだけで頭に入ってこない。学匠的な論調であるのだがどこか婉曲的でとっつきにくい。文章との相性が悪いというか、まるで同極の磁石同士が反発するように、文字を読んでも頭に入ってこないのだ。

 文章というのは、己の考えを文字に起こして自分以外の相手に考えを理解してもらうための手段と考えることができる。読みやすい文章イコール優れた文章という単純な図式は成立しないところがあるものの、相手に伝わりにくい文章に比べれば遥かに優れている。文章は、読み手側の読解力に依存した面もあるにせよ、まずは伝わってナンボだ。

 本棚の肥やしになっていた本を読み返した時に、爪が食い込むほど集中して読破することがある。最初に読んだときは自分のレベルに合致していなかったが、年月を経て内容を理解できるレベルに自分が引き上げられた時に起こる現象である。この出逢いは読書の醍醐味のひとつであろう。えてしてお気に入りの一冊になり、生涯のラインナップ入りを果たすからである。

 後で読み返した時に驚きの再会を果たすことがあるために、ピンとこなかった本は処分せずに残しておくことも一考である。本書が、そうした一冊になってくれることを祈るばかりだ。さて、ストック用本棚の肥やしになってもらうとしようか。
 
posted by ぎゅんた at 22:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画以外の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月02日

【書評】総理(山口敬之/幻冬社)


 世の中は「マスコミ」を蛇蝎のごとく嫌う人がいる。マスコミというだけで警戒する人もいる。お近づきになりたくない業界ということで距離を置く人が少なくない。だれも口には出さないだけで、マスコミは好かれていないのだ。嫌われていると断じてもよかろう。なぜ嫌うのか、その理由には変化があるようだ。

 昔は、やれ記者の態度が横柄だとか無礼だとか、記者の振る舞いが指摘された。これはいまも残っていて、例えば被害者宅に集団で押しかけて近所の迷惑も顧みない強硬取材を行うとか、被災者の神経を逆撫でするような礼節を欠く取材姿勢への批判がそれである。ニュースのタネを手に入れるために結果としてこうした態度をとってしまっうマスコミ側の理由も分かるが、度が過ぎている。マスコミのこうした行動様式は「連中の習性」として黙認されるに至っているようだ。

 現状、これに増して嫌われる理由が偏向報道である。マスコミはただ真実だけを報道してくれればいいのに(それこそがマスコミの仕事であるのに)ノイズをまじえたり曲解させた報道をすることが赤裸々になったからだ。スポンサーの存在が真実だけを報道する姿勢に水を差されているというマスコミ側の理由も分かるが、これも度が過ぎている。真実を報道する、その遂行のために、彼らには「知る権利」が与えられているはずなのだが、越権していると言わざるをえない。取材に対する返答が歪曲されることは平常運転である。決して気を許して付き合うべき存在ではないと考えた方がよい。


 本書は、安倍政権の舞台裏にいたジャーナリストによるノンフィクション・ルポである。政治というのは、人間と人間のぶつかり合いであるので、ニュースで知ることのできない舞台裏の話はえてして生々しい人間模様となる。それはやはり、興味を惹かれる題材だ。加えて著者の筆が乗っていて読みやすくまとめられているのだから、面白くないわけがない。政治は、人間と人間が感情を持ってぶつかり合う想像以上にアナログな群像劇である。

 ジャーナリストによるルポであって、安倍政権批評本ではない。「あの時、こういうやりとりがあった(その場に私が関わっていた)」という類であって、個人攻撃や政党批判や政策提言などは特に見られない。なぜ安倍政権の支持率が高止まりであるのかについて、作者の考察が混じっている程度。全体的にニュートラルな印象で淡々としている。その中で、安倍総理の人となりが好人物像というか、無菌的というか、美化されすぎにに思えてならないところがある。もっとも、付き合いが長ければ情も移るので悪く書けなくなりはなるだろう。それが人間というものである。

 このあたり、著者も自覚しているように、政治家に肉薄して取材を行うことは、腰巾着とか政党の走狗になるとか広報化とか、アレコレと批判される対象となりうる。確かに、その通りである。しかしそれでも、精緻な取材を行おうと思ったらジャーナリストは取材対象に肉薄しなくてはならないのも事実である。取材を通して得られた事実を歪曲したり曲解したりしなければ誹りを受けるいわれはない。あくまでこの本から受けた印象からの判断だが、私は、この著者は信頼できる人物だと思う。

 政治は結果が全てだとか、アベ政治死すべし!と拳をあげる人には向かない本である。政策の具体的ば提言や考察というのはなく、安倍政経批判もないからである。私は常々、政治にベストはないからベターをと考えるが、その意味で現政権はベターであり続けている。そしてまた、政治を担う政治家という人種を選ぶ選挙とは、薬に化けるかもしれない毒を選ぶ行為だと考える。比類なき教養を備え高潔で、決して驕ることのない人格者たる政治家を誰しも望むが、そうした傑物はえてして政治家にはならない。感情むき出しの人間同士が跋扈する鉄火場で闘い抜くにはタフな毒でないと勤まらないのであろう。
 
posted by ぎゅんた at 23:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画以外の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする