2015年07月31日

【所感】ベーシック・インカム (原田泰 著)


本書は、ベーシックインカムについての解説本ではない。ベーシックインカムについて多少の知識を持ち合わせている人や、この制度を現実的に導入することを想定した時になにが障害となるかを知りたい人、格差社会・貧困問題に対するひとつの見識を増やしたい人、らに向けられた本であろう。

頭のいい大学教授が、自身の研究内容を引用・解説しながら叙述している印象が強い。読み応えのある濃密な内容で知的好奇心をくすぐられる一方、気軽に読むにはやや難解な印象を受ける(経済学に長けた人には易しそうだが…)。

もし貴方が、ベーシックインカムという制度について学びたいのであれば、まず「ベーシック・インカム入門」を読まれることを薦める。その本の刊行日は2009年ごろで、当時は、ベーシックインカムという制度がちょっとした話題になっていたのだった。その後は急速に、BIに関する世間の興味と熱は失われて現在に至っている(BIは巨額の財政支出を伴うことと貧困の禍根は当人と生活にあるのだという誤解から、議論は低調になったようだと作者は述べている)。

ひとまず、
貧困とは所得が少ないことだ。本文で詳しく述べるが、現行の生活保護制度の問題点は、その給付額が十分か否かではなくて、そこにアクセスできない、つまりもらうべき人がもらっていないことだ。BIという制度にアクセスできれば、人々は生活費を得られ、絶対的な貧困から脱却することができる。BIの利点は、すべての人々を貧困から救うことができるということだ。(はじめに より抜粋)


この文章を読んで興味を引かれた人は読むと良いのではないか。著者が本書を通じて述べたくて仕方のない要諦はここに述べられているからだ。著者は、ベーシックインカムの導入をヨイショするためにこの本を書いたのではなく、とにかく貧困問題を解消したくてたまらないのである


ベーシックインカムに関しては、賛同する意見もあれば批判も大きい。
賛同する人は、しばしば「現実をみていない」と糾弾される。
批判する人はしばしば財源をどう確保するのだと口にする。また「貧困に喘ぐ人々はそもそも自業自得である」というスタンスをとっているのが常で、そのためには生活保護があるでしょうと述べる。

私は、ベーシックインカムという制度は(現行の社会保障制度に対して)、その導入により行政とコストの単純化とスリム化を達成できる可能性がある点を最大に期待する。赤字が膨らみ続けるのは、現行の社会制度に無駄や誤りが在り続けているからではないのか。一方で、ここまで熟成された現行の社会制度を変更するのは不可能な気もする。社会制度は、時代の潮流に合わせて常に最適化されているべきだが、アップデートの限界が着たらシステム自体を刷新しなくてはならない。生活保護に関しては、著者の言うとおり、給付水準が高すぎるし、支給要件が厳しすぎる(アクセスできない)。

ベーシックインカムに対する批判には、先述の「貧困に喘ぐ人々はそもそも自業自得である」よろしく、どことなく感情的なところが散見している気がしてならない。これは、生活保護の給付水準が高すぎることへの妬み嫉みの転換ではないか。生活保護制度は貧困問題の解決には役立っておらず、現実に即さぬ歪さにまみれている証明でもある。生活保護と貧困についてもまた、考えさせられることだろう。

ベーシックインカムを現行の社会制度で実現した場合に考えられうる変化(メリット・デメリット)は、貧困が解消されること以外についてはあまり解説されていない。過去に議論され尽くしているし、実際にロールアウトされないと判定ができない要素だからだろう。ただ、すべての人に平等で、豊かな社会を望む上で、ベーシックインカムはたいへんに効果的で魅力的な策に思える。

現行、ベーシックインカムが採用されることはないが(役人たちは末期まで制度の現状維持をやめないから)、採用せざるを得なくなる未来がこないとは言えない。採用しないならしないで、貧困問題や年金問題がどう解決されるのか、興味は尽きない。おそらくグダグダと延命させつづけ、世間の関心の薄れと高齢者の数が減ることを待つだけだろう。最大の問題は、責任をとるべきリーダーが常に不在である日本の制度そのものかもしれない。

本書を読むんでいると、考えさせられることが多くて頭が疲れてしまった。濃密な一冊である。
 
posted by ぎゅんた at 21:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画以外の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月13日

漫画感想「青山月子です!」第10話 秋波

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このページをめくったあと、貴方はとんでもない衝撃を受けるだろう

やばいのである

別冊マーガレットを手にとったら、真っ先に「青山月子です!」を捜す人々(私を含めて少なくないはずである)の全員が、今回の話を読んで、とてつもない情動を受けたはずだ。とにかく、危険だ

思えば、月子さんにとって加賀美くんは、切望していた友人であり信頼できる相手なのであった。人は、他者との関わりを通じて己を知り成長できる。一緒にいて心地よい人、落ち着く人、楽しい人、は、自分の波長に合う特別な他人とも言えよう。そして、そうした相手がいなくてはならない。それが異性であれば、恋慕感情に発展もしよう。同性の友人、あっくんの存在ができてはじめて、月子さんは加賀美くんへの意識が友愛の情から恋慕の情に移行したのだと見る。



物語は、このままハッピーエンドになだれ込み終幕の運びになるのだろうか。
それとも、突如、記憶の回復(記憶喪失期の記憶の喪失)が起こり、現在の青山月子の消失(本来の青山月子の復活)といったドラマに転じていくのか。

1話以降、杳としてしれない母親の存在が気にかかるし(父親も)、加賀美くんの家庭事情も燻りの火種となる気がしている。

湯木のじん先生の作風を考えると、シリアス路線(バッドエンド)に舵を切りすぎることはないだろうから杞憂であろうと思う一方、作風を開拓する意味でシリアス路線に挑戦されるかもしれないとも思う。

いずれにせよ、一介のファンに過ぎない私は応援し続けることしかできない。
11話を楽しみにまた一ヶ月を生きることにしよう。


まとめ
ぎゅんたは湯木のじん先生を応援しています


青山月子です! 1
青山月子です! 2
posted by ぎゅんた at 18:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 湯木のじん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月01日

(書評)実力大競争時代の「超」勉強法


まとめ
勉強は楽しいよ!勉強しようね!


豚であることのコストは、とてつもなく大きいのだ。(p.230)

この一文だけを読むとなんのこっちゃであるが、本書を読めば答えが分かる。端的にいえば「勉強により蓄積された知識は、自分の人生に深みと豊かさをもたらす」ことを示しているのだが、一方で、勉強することと知的快楽は人間にのみ与えられた究極の特性であることも意味している。私が読み間違えていなければ、そうだ。


成功するための勉強について。具体的に何を勉強するか。勉強と学歴社会。国際競争力の低下と勉強…
本書は現在(2011年当時)と将来の日本の国際情勢を、「勉強」の観点から分析している。
勉強についてのハウツー本というよりは、現代日本の、学生のみならず社会人に蔓延する勉強不足と、その結果としての国力低下、そして日本国の将来への強い懸念が綴られた本である。ビジネス書としても読めるし、勉強についてを学ぶ書でもあるし、日本の将来を憂うこともできる。


勉強せよ(人生と成功のために)
勉強は楽しい。勉強によって未来が開かれる。著者が現代版「学問のすゝめ」を意識して書いたかどうかは分からないが、メッセージは明確だ。勉強をしないのはあなたにとって損失だ。成功したいのなら勉強しなくてはならない。そういう人が増えないと、国の将来は潰えてしまう。そして、日本人は勉強しなくなった。どうなってしまうのだろう。

それは本書の後半にくるともう圧巻で、第一線にいる作者は身を引き裂かれる危機感を常に抱いているのだろうと言葉が詰まる。少なくとも読者は、一時的な焦燥感に駆られる程度で済むのだが、それで済んでいることこそが問題なのだ。

賢い人が「このままでは日本は立ち行かなくなるから」勉強しなさいと述べている上から目線の本である、と言えなくもない。勉強しない人は絶対にしないのだから、個人の好きにさせればよいではないか(する人はするのだから)とも思う。

しかし、ここまで勉強を愛している人は稀有であり、その声には耳を傾けるべきである。部分的に学匠的な記述があったり、外国を持ち上げすぎているきらいが見られるけれど、根底には著者の温かなヒューマニズムがある。「勉強しよう」と述べられている本だが、勉強しない人を馬鹿にしている本ではない。勉強をしない人は、向上心がない怠け者なのではない。勉強が面白いものだということを教えられなかったからだ。教師は、学生や生徒に勉強の面白さを教えなくてはならないのだ。それを考えると、勉強嫌いの人が多い責任は、教師にある。ひょっとしたら教師自身が、勉強の楽しさを知らないのではないか。教える方も教わる方も、勉強の楽しさを知らないのはとても不幸なことだ。
「勉強したい」と思うのは人間の本能であり、本来は勉強は楽しいものだと断ずる著者の意見に強い希望を感じられずにおれない。国民の殆どが勉強が好きになれば、それだけで凄い国になるだろう。そう思うと、ワクワクする。

難しく考えず、勉強をすれば未来は明るいのだと思えば良さそうだ。単純でいいことだ。実行できるかどうかは単純でなさそうだが…
 
posted by ぎゅんた at 05:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画以外の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする