2015年06月29日

映画感想「チャッピー」 日本の記号をいれるのやめてくれませんかね…

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ニール・ブロムカンプ監督の新作は「エリジウム」以来である。「第9地区」でデビューを果たしたこの監督は、個人的にはポール・バーホーベンの後継的位置づけにあり、お気に入りである。

どことなく禄でもないSF近未来とバイオレンス描写と人間はクズのスタンスをヨハネスブルクエッセンスで仕立て上げられた「さもありなん」な世界はこの監督にしか構成できそうもない。唯一無二である。インド人が火を吹いたり手足を伸ばしたりテレポートしたり中に浮いても不思議ではないのと同様に、ヨハネスブルクにおいては、二足歩行ロボが治安維持のためにロールアウトされていても不思議ではない(思考停止といえばそれまでだが、無条件にそう思ってしまいがちの妙味)。

エリジウムはどこか残念な出来だったが、これはどうだろう。

結論からいうと、悪くはないが物足りない出来である。感情をもつAIがどうたらとか、チャッピーの成長が不自然とか、そういった点を指摘するものではない。人間型ロボットに感情を有する知能が備わったら、というのは、人間の命を問う点で普遍的なテーマである。監督がなぜ今、これをやろうとしたのかは伝わってこなかった。インド映画「ロボット」をみて思うところがあったのだろうか。あちらは基本おバカ路線だったが、こちらは基本シリアス路線である。

映画の構成はいつものごとくで、

1.主人公サイドは正義の味方でもヒーローでもない
2.少なくとも主人公は生きることに貪欲
3.主人公サイドに対する明確な対抗勢力(敵)が存在
4.物語終盤はガチンコバトルになだれ込む
5.単純なハッピーエンドで終わらない
in ヨハネスブルク

である。

後半のガチンコバトルでは監督の「趣味まるだし」が大放出される。第9地区ではEXO-SUITがそうだった。今作は無論、ムースがそれである。序盤にその姿が見えた瞬間に本作の展開が予想できしまう。様式美かもしれない。アイデア不足かもしれんが。

さてこの「趣味丸出し」シーンの一部に違和感おぼえた。鑑賞後に調べたところ、レーティングを下げるために一部の暴力シーンがカットされたのだという。どれがどこまでカットされたかは分からないが、「趣味丸出し」シーンに水をさされて損をした気持ちにはなる。この監督の作品に登場するキャラクタはクズ揃いなので、そうした連中が無残に死んで行くのは感情的に快感をもたらす。品のないことだが、否定しても仕方が無い。少なくとも、私はそれが味わいたくて、この映画を観に行っている。なので、暴力シーンの一部がカットされていると損をした気持ちになる。クズい登場人物らの死にざまを見たがる観客もまた、この監督の人間観であろう「人間は自己中で汚いイキモノ」に合致し、自覚を促される。それでも人間は、自分以外の生命を慮ることのできる上で存在を否定できない側面をもつ。今回はそれを高度AIを有するチャッピーに演じらせている。

ところで目を覚ましたヨーランディは喜ぶのだろうか?ニンジャと共にチャッピーを恨む結果にしかならない気がする。例え高度なAIや意識があっても、機械であればそれは命とは違うと考えるだろう。博士は意識の転送を嫌がりもせず受け入れていた様子であったが、彼は自ら生み出した高度なAIに命をみていたからかもしれない。色々と考えさせられる結末である。


※本監督は「エイリアン5」の監督に抜擢されたそうだ。終盤にパワーローダー(大型ロボ)が暴れまくる「趣味まるだし」シーンが撮られるのは間違いあるまい。
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2015年06月16日

漫画感想「青山月子です!」第9話 はじめに名前があった

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2人の仲直りと再生の巻。

記憶喪失になっても覚えていた自分の名前は、月子さんにとっての本体であり、ふたりを結びつけたはじまりだったのです。

(一話以降登場しない)母親は、月子さんを「月子」と呼んでいるのだろうけれど、自分の娘と思っていないニュアンスのままなのかもしれない。いい名前だな、と言ってくれた加賀美くんは、月子さんにとってどれほど暖かい存在であったのだろう。だから、加賀美くんに「お前」としか呼ばれなくなると、身を引き裂かれそうに辛く悲しい気持ちになるのです。

自分の名前を大切にしている月子さんをみると胸が苦しくなります。それを覆してくれる加賀美くんをみると救われた気持ちになります。ずっと、月子と加賀美くんの間柄でいて欲しいと頬が緩むのです。

posted by ぎゅんた at 05:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 湯木のじん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月09日

【試乗】新型ロードスター Special Package(FR/6AT)気の抜けた炭酸ジュース

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注)新型ロードスターのATはSKY-Driveではなく、アイシン製の6ATのようです。気づきませんでした。(6/14)

ボディカラーはセラミックメタリックであった。ソウルレッドプレミアムメタリックと並んでマツダ一押しの色なのかもしれない。前回試乗したSと比べ車両重量は60kg重くなっている。果たしてどのような印象を受けるだろうか。

マツダ自慢のSKY-Driveは躾が良く、クリープからアクセルを踏んで加速していくとごく自然に速度を増していく。ドライバーが特に加速しなければ自動でどんどんシフトアップして燃費を稼ごうとする。急加速するならギアを低速に落としてアクセルを踏むか、キックダウンスイッチを踏めばよい。俊敏な加速ではないが、息の長い気持ちの良い加速をする。

シフトレバーの手前にはドライブセレクションなるスイッチがあったが、単にギアを低めに維持しようとする程度のものだろう判断して触らなかった。デミオやCX-3にもついていた気がする。

アクセラ20sTouringよりも排気量が500cc少ないけれど軽快感を感じるのは軽量なだけある。加えて、オープンにすれば、気持ちの良い風を感じながら走ることができる。そのまま、ある程度のスピードでコーナーを曲がって行くときも重心が沈み込むようにして粘ってくれるので、ちょっと速い速度でも安心して攻めることは容易。気持ち良い走り。

素性のいい軽量シャシにATであるから、運転はとにかく安楽である。小さめの車体でFRなので取り回しも良い。オープン走行それ自体を気軽に味わってみたいと考える人に向いている。

ただし、乗り心地の良さまで面倒をみてくれる車ではないから、長距離長時間の移動は疲れてしまうと思われる。安楽なオープン走行が可能とは言っても、正体は小排気量軽量オープンカーであるから当然だ。長距離の移動も疲れないオープンカーが欲しいならNDはオススメできない。いいことずくめのオープンカーなど存在しないのである。

専用設計のSKYACTIV-G1.5は、ロングストロークなことが災いしたのか、そもそもロードスターのエンジンは特別でないとする伝統の踏襲か、突き抜けてよく回るレーシーなエンジンではない。しかし、回した分だけキッチリパワーが出てくる感じはあるし、高回転域に入るに従ってスポーティな音が聞こえてくる。これは積極的に回したくなる音だ。ただしATだと狙った回転数を維持して走らせるのが面倒である。

冷たいソーダが甘く感じられるのは、途方もない量の糖分が含まれているからである。ぬるくなるとそれが露呈して甘だるくなるし、炭酸が抜けたらまるでシロップだ。ドライバーが常に動力を制することが、結局はロードスターの美味しさをいつも味わえることになる。

ATのNDロードスターは、これはこれで美味しく仕上がっているのだが、NDロードスターは軽量非力なオープンカーである。折角、そのような希少なクルマに乗るのだからMTで乗るのが正道だ。


まとめ
実質的な速さはたいしたことはないけれども、ロードスターらしいスピード感はしっかりでているし、そもそもが速さを求めたクルマではない。MTで乗る方が色々と楽しめるし有意義かつ有益である。もしATで乗るなら、シートヒーターの付く最上級グレードでゆったり優雅に乗りこなせば良いのではないか。


・モアパワーを求めるなら、中古でNCを買うか北米で設定があると噂の2L搭載モデルの登場を待とてばよい。個人的にはNC(MTでソフトトップ)の購入を推す
・ドア内側にペットボトルホルダーがない(NCにはあった)
・インナートリムのパワーウィンドウスイッチ周りのカーボン調パネルが嫌

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2015年06月07日

映画感想「メイズ・ランナー」 ランナーの数すくなっ

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※画像はイメージ

まとめ
・暇つぶしにはなる娯楽映画
・細かな考証は無価値


ダイバージェントに続き、またもやラノベっぽい(ティーン向け)洋画。ちょいとこじらせた性格の人向けな設定ながらも、設定倒れ感プンプン映画。別に無理に映像化せんでもとも思うし、細けぇことはいいんだよと確信犯的映像化姿勢がステキと思ったり。駄作ではないが、個人的に期待していた内容ではなかった。

設定は、興味を引くのである。
意味も理由もなく巨大迷路に閉じ込められている若者たちの脱出劇と、謎の究明がハイライトのようだからだ。巨大迷路は、朝、入り口が開いて日没には閉じる。日没後の迷路には化け物が出現するので帰還できなければ死が待っている。メイズ・ランナーとは、この巨大迷路の内部を探る者のことである。

というわけで、迷路内部の探求と脱出劇がメインだと期待するわけだが、なぜかランナーの数は少ない。若者たちのコミュニティ(ベース)は、その維持のために労力が必要なので、皆がランナーではないのだ。ランナーは設定上は数人、いるのだが、実質、1人と(当然のごとく)主人公の二人である。選出の理由もよくわからない。持久力があるとか足が速いとか判断力に優れているとか、いかにもな理由がなくハッキリしない。どうでもいいのである。脱出を願う革新派と現状維持の穏健派の対立がテーマだてば良いのである。いうまでもないが、主人公らは脱出を目指し、そうでないものは穏健派ということになる。

主人公は(ありがちな)特殊能力など持ち合わせていない。前向きに脱出を考える、とにかく運のいい男としか言えない。正体は観客はすぐに予想できてしまう程度の浅いものだし、なぜそのような境遇にあるだろうという謎というか意味不明なところがあるが、気にしても仕方がない。不可解と不条理さは、こうした映画のちょうど良いスパイスになるものだ。重要なのは、前向きに行動することを極めてポジティブに捉えているメッセージ性にある。自動的に穏健派は碌な目に合わないことになるのだが。

ところでこの迷路、よじ登ることなど不可能な高い壁で構成された無機質でミステリアスな印象を受けるのだが、あまり広そうにも閉鎖的にも魅力的にも見えないのが残念だ。時間で順路が変化するとか立体的な一面を見せて起きながら、結局のところ出口へは仲間たちと平地をマラソンしていけばたどり着けるバリアフリー仕様。もうちょっと迷路内の描写が欲しかった(モデラーかツッコミを入れたくなる迷路の自作ジオラマが大きさと広さを強調してはいたが)。

出口と思しき場所はスキャンが作動したりしなかったり、どうやってパスコードを入力するのかわけ分からんビジュアル系端末だったり、当たり前のように門番が立ちはだかっていたり。昼間はいないんじゃないのかとか言っても仕方がない。襲われてモブ仲間が数人、退場することになってもが誰も気にしていない。自由を求めて戦って死ぬ人間は尊い必要経費、召されても天国へいけよう。嘆く必要はない。しかし死亡フラグを立てた太っちょが死ぬと皆で涙するあたりで興醒め。

そのあとは懇切丁寧な説明ムービーが流れて一方的な強引な幕引きで引っ張って終わる続編ありき仕様。謎が謎を呼ぶ超大作を演ずるも、続編はただのいつもの人間同士の内ゲバ路線ぽいので微妙。巨大な謎の迷路を彷徨うサバイバルアドベンチャーじゃねえのかよ。そもそも迷路の中にヘリでいけるだろが。紙コップぐしゃ。
  
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2015年06月06日

【試乗】ケイマンGTS(MR/6MT) 蠱惑的精緻

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私のような凡庸なドライバーには正確な評価を放棄したくなる、ポテンシャルの塊を形にしたミッドシップ・クーペ。他に気の利いた言葉でうまく形容することができない。公道を走らせる分には完全にオーバースペック。一瞬の加速で60km/hに達するし、地面にへばりついてコーナーを高速で駆け抜けるし、どんな速度でも余計な横揺れを全くきたさない。凄すぎ。

以下は、素人目線の率直な感想と意見である。


エクステリア
一目でポルシェとわかるデザイン。リアフェンダーとリアガラス越しに、エンジンの強い存在感を暗示する押しも押されぬアグレッシブなスタイル。まるで工芸品のようだ。ガレージに飾る人の気持ちがわかる。

試乗車のボディカラーはZ4にあった、ハバナブラウンのような色合いであった。静謐な佇まいにマッチしたカラーである。ケイマンGTSのキャラクターと走行性能を思うと地味な色であるが、なんとも奥ゆかしく渋いチョイス。


インテリア
センターコンソールにボタン類がムカデの足の様に配置された、現行ポルシェのあのインテリアである。配置される多数のボタンの中に、スポーツ、スポーツ・プラスのボタン、エグゾーストシステムボタン、足回りのセッティングを変更するボタンがあった。メーターはボクスターと同じく3連大型メーターである。速度計は300km/hスケールな世界のため、慣れないと走行中に速度を瞬間的に確認することが難かしい気がした(デジタル表示の速度計もついているが、メーター読みの方が慣れている)。速度はメーターで確認するのではなく体感で判断すればよいのだろう。それが可能なほど、ドライバーが車体から受け取るインフォメーションの正確性が高い。なお、デジタル表示は速度だけでなく、ギアが何速に入っているかも表示される。

内装カラーは事細かにオーダーできるのだろうが、試乗車は、ライムイエローのようなソフトタッチ素材をインパネに起き、足元はルクソールベージュのような明るい色合いであった。シートに座っていると前向きな気持ちになれて気持ちが良い雰囲気だ。ポルシェの内装は、明るい色合いが案外に似合う気がする。スポーツカーだからシリアスに、といって黒一辺倒(加えて、赤をアクセントにした)インテリアに仕立てるのは味気ない。

シートに座る。着座位置が低く、タイトで、足を前方に投げ出すような姿勢が心地よい。脚の長いドイツ人設計のためか、シートを前方にスライドしてもペダルが遠く感じる。


トランスミッション
クラッチを含むペダル類、ステアリング、シフト操作は半力に溢れた重めの味付け。シフトは、変速時に掌より伝わる硬質な操作感が気持ち良い。クラッチのつながりはごく自然で極めて扱いやすい。シフト操作時に引っ掛かかりや渋り、緩みや遊びは一切なく、常に重厚なゲート感がある。とても精密なトランスミッションを操っている感を味わえるのが良い。ただし、意味もなくシフトチェンジしたくなるような、NDロードスターのような軽妙洒脱さはない。ケイマンGTSはシフトフィールも硬派なのである。どちらが優れているとかではない。どちらが好きかといえばNDロードスターの方だが。


ドライビング
シートの後ろにエンジンが位置するミッドシップ・レイアウトであり、なおかつGTSグレードである。アイドリング状態からして、頭の後ろからエンジン音が聞こえる。大きめの音なのだろうが、騒々しくはない。ちょっと拍子抜けかもしれない。エグゾーストシステムを押すと、演出として車内に届くエンジン音が強調されるようだが、これを常にONにしているほうがケイマンGTSのキャラに合っている。音に物足りなさをおぼえる人や拘るひとはマフラーを交換すればよいだろう。

エンジンの美味しい回転域は3500-7500あたりだろうか。しかしフツーに街乗りする分には、その領域を使わなくても済んでしまう。50km/hを6速で走ることもできなくはない。もし加速のために低速ギアでトップエンドまでアクセルベタ踏みで引っ張ろうものなら、メカニカルなエンジンサウンドが頭の後ろからドライバーを包み込み、一気に駆け上る加速が身体を襲い、こりゃヤベェ…と恍惚感を感じた瞬間には脊髄反射でシフトアップとアクセルベタ踏みを実行させられている。

ケイマンGTSは、絶対的な加速性能の面では、他のスポーツカーに比べ白眉と断言できる性能ではないだろう。ただし、ドライバーを無我に熱くさせる英傑であることは確かだ。そのまま、とんでもないスピードで急峻のある連続コーナーをスロットカーのように地面を這って駆け抜けていける。

こうした場合でも、低速巡行時であろうとも、運転していて車体の余計な横揺れが軋みが全くないことに驚いた。これが「剛性が高い」という状態なのだろうか。これなら、どんな速度で走らせても安心で疲れにくいといえそうだ。

帰りに、GHアテンザで同じ道を走ってみることにした。そんなに悪い結果ではないハズと信じていたが、明らかに揺れと不安感をおぼえるのであった。GHアテンザは、水を霧吹きでかけられた紙細工のようなヤワさに感じ、ケイマンGTSは鉄製の牛乳パックのようである。


まとめ
走りを求めてケイマンを選ぶ、選ばれた人のための、真摯なグレード。とにかく硬派なマシン。
モータースポーツが趣味でサーキットを攻めるとか、高速道路をちょっと他人には口できない速度で駆け抜けて移動したい人、ケイマンを愛する人が買うべきである。

posted by ぎゅんた at 06:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 試乗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月04日

【試乗】ロードスター S(FR/6MT)Let's do this.

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短時間の試乗であったが、感じたことを記す。

エクステリア
新型ロードスター(ND5RC:以下、ND)は、歴代ロードスターの中でもかなり小さいサイズになったという。全幅こそ1735mmあるものの、全長は3915mmと4mを切ったからだ。しかし幅自体は歴代中、最も大きいので、短くなったとはいってもそこまで小さい!とは思えない。幅が大きくなったと同時に全長がエッジを立てつつ短くなり、硬質感が増している。フロントフェイスは最近のマツダのアイデンティティである魂動デザインとは異なっている。以前に乗っていたNC1と比べれば、ウーパールーパーのような愛らしい表情からは随分と精悍になった印象だ。

個人的にクルマのデザインは、後姿が美しいかどうかだと思っている。NDの後姿は好みではない。ジャガーFタイプのリアを中途半端にパクったかのように見える。エグゾーストパイプが右下に2本のルックスはアンバランスに感じる。2本ではなく、見かけだけでも太くした一本で決めるか、シンメトリに左右2本のほうがリアデザインのシリアスさにマッチすると思う。全体的に見て、シャープで精悍なデザインで格好良いけれども、歴代のロードスターに漂っていた「敵を作らない緩やかさ」は薄れたのではないか。NCがアメ車的であったとするなら、NDはどことなく英国車っぽい。

試乗車のボディカラーはCX-3から登場した新色セラミックメタリックであった。晴れている日中だと明るい白色に見える(曇りの日はグレーっぽく見える)。ボディカラーはドアトリム上部にそのまま反映されるし、造形的にボンネットから連続的にピラーを貫通しているようになっている。そしてボンネットは、低い着座位置にも関わらず視界に収まる。なおかつ、フェンダーとの境界付近が盛り上がっているのがシートに座りながらも目に入ってくる(これは珍しいデザイン処理では)。ボディカラーはかなり密接にドライバーのそばにあるわけで、要はNDのボディカラー選択はかなりの重要項目である。

カラーのラインナップをみると銀色の設定がない。伝統的にロードスターは銀色が似合わないので外したのかもしれない(その代わりにセラミックメタリック?)。
ソウルレッドプレミアムメタリックの展示車があったが、目にうるさく、暑苦しい印象を受けた。セラミックメタリックに比べればテンションが上がるポジティブさに満ち溢れているが、おっさんが選択するにはきぜわしい気がする。

実物を見てないので無責任な発言になるが、NDはアークティックホワイトが似合うのではないか。


インテリア
あまりマジマジと見たり触れていないので細かな点についての言及はできない。ロードスターにしては豪華だなあという印象。派手な気もするが、従来型がシンプル過ぎた気もする。

Sグレードにはマツダコネクト(のディスプレイ)は装着されない。セグメント液晶オーディオディスプレイがそれに変わる。個人的にはオープンカーにナビは要らないと思っている(道をきくか地図をみればいい、そうした余裕をもって乗ればよいのである)。ロードスターは特にオープン走行に特化したクルマだけに、なおさらのことである。このセグメント液晶オーディオディスプレイはデザイン的にシンプルで、インテリアに嫌味なく調和している。少なくとも私はNDに乗る上でマツコネは要らないと考えるから、このSグレードとセグメント液晶オーディオディスプレイに大きな好感を覚えるのである。夜間オープン走行時にナビの画面が視界に眩しくちらつくと気分が削がれる。

内装がブラック一辺倒なのは、せっかくのオープンカー、そしてロードスターにしては色気がない。ソフトトップも黒しかないのは味気ない。オープンカーの都合上、耐久性を考慮した材質に揃えなくてはならない事情もあろうが、過去のVSグレードのような、遊び心を演出できる方向も用意して欲しいと思う。

カップホルダーが着脱式になり、センターコンソールの後端(+助手席のフロントコンソール)に位置することにより、シフト操作時に左肘がドリンクと干渉する半分ギャグみたいな設計は過去のものになった。


ドライビング
NC1(RS)に比べ約100kgの重量減と、39PS、4kgm減の動力性能はどのような走りをみせてくれるだろうか期待に胸が膨らむ。

クラッチを踏みながらスタートボタンを押すと、エンジンが吠え、タコの針が大きく触れてアイドリング状態になる。NCのときは針がピクッと動く「走りへの期待」の演出があったが、地味過ぎて誰にも気づかれなかったことを反省したのだろうか。これは好ましい変更である。

アイドリング状態のシフトノブはブルブルと揺れている。掌で包み込めば、いつでも動力部の息吹を感じ取ることができる。知らない人が目にしたら壊れているのではと思うかもしれないが、これこそFRのMTである。

シフトを1速にいれてクラッチを繋げて発進する。シフトは、歴代譲りの40mmショートストロークで操作時に強いゲート感がある。変速時には金属的な節度感が高いので手動(マニュアル)で変速させている、機械を操っている一体感につながっている。クラッチのミートは、どこでいつ繋がったか分からないほどフレキシブルである。極めて扱いやすいので、初めての乗車でもエンストの心配はいらない。ずっとATに乗っててMTの操作を忘れてしまったという人でも大丈夫であろう。MT人口の増加に寄与しそうなぐらい良くできている。

店から公道へと左折して合流した時点で、フロントがくるんと回頭する感じを尻越しに感じ取ることができた。この瞬間、私はたいへん嬉しく救われた気分になった。なぜなら、NCに乗ることを決意したのは、この感触があったからこそであったからだ。そのまま流れに沿ってトコトコ走らせるだけで、愉快な気持ちになる。高いレベルで作り込まれた車体をオープンで走らせる非日常的解放感は堪えられない魅力に満ち溢れている。日差しが肌を刺す日中のオープン走行の楽しさは限定的なところがあるが、夕暮れ時や夜間のオープン走行の享楽さは言葉では説明できない。NDを試乗される方は夕暮れ時のオープン走行をオススメする。その際は、普段、自分が通っているルートを走らせてもらうとなお良いのは言うまでもない。

踏みしろの大きなオルガンペダルを踏みつけ加速させると、NDは、1.5直4の割になかなか迫力のある音を鳴らす。また、エンジンの回転数上昇に合わせてリニアで力強い加速が続く。この時のエンジン音は、過去のMZRエンジンを彷彿とさせるどこか荒々しいけれども魅力的な感じがした。加速は、絶対的な速さではない。しかし、実際はそこまで速くないとしても、速く感じられるのはいいことだ。NCは冗談抜きに速かったが、無用に速過ぎたのである。専用設計されたSKY-G1.5のRevは7500rpmで、スムーズに回ってはいくものの、ロングストロークのためか「鋭さ」はない。しかし、ロードスターのエンジンにケチをつけるのは野暮である。エンジン音が物足りない人はオプションのインジェクション・サウンド・エンハンサーを装着するかマフラー交換をすればよい。



まとめ
このSグレードはボトムグレードであり、素うどんのような存在であるが、ドライビングに関して最もNDの魅力を味わうことのできるグレードであろう。実際に試乗したところ、実に魅力的なオープンカーに仕上がっていた。NAからの乗り換え難民はこのSグレードを選ぶに違いない。走りを楽しむために不可欠な装備がひととおり揃っており、余計な(と言っては語弊があるけれど)装備が省かれるからである。クルマの楽しさは、快適装備を加えるほどボヤけがちになる。ロードスターのようなタイプのクルマでは尚更にそれは顕著である。

機会があれば、他のグレードのMTも試乗してみたいものだ。


致命的なポイント
・シートヒーターが最上級グレードでないとつかない
・幌の色が黒しか選べない
・北米版の2Lエンジン搭載モデルの存在
 
posted by ぎゅんた at 22:30| Comment(1) | TrackBack(0) | 試乗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする