2015年01月25日

(試乗)新型アルトバン VP (FF/5AGS)

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すごい角度のリアシート

まとめ
・これこそスズキの軽自動車
・VPは、せっかくなので車両重量610kgのFF/5MTを選ぼう


 アルトバンは新型アルトの商用グレードである。仕事に使うことを重視しており、後部はフラットな荷室である。厳密にはリアシートが備わっているが、まともに使用できるものではない。起こした床板が背もたれになるだけの、即席ベンチというかジェットコースターの椅子といおうか。緊急座席になりこそすれ、一般的な成人男性の体躯であれば窮屈で長時間は耐えられぬワンマイルシートである。そもそも乗り込むのも一苦労する。なので、後部座席は存在しないものと考え、常に倒してフラット荷室にしておくか、カバンやちょっとした荷物の置き場になるだろう。荷室と考えれば、小さな軽自動車に相応の空間が用意されている。なお、後部ドアのウインドウは開閉不能である。

 このVPグレードは、ボディカラーがスペリアホワイト一色しか用意されない。ホワイト、とくればまさしく商用車のカラーだが、ソリッドな白(いわゆる「ただの白色」)と違って明るくお洒落な、好感の持てる良い白色である。
 
 インテリアは、軽の商用車としては明るくお洒落な印象。他グレードと同じく明るいインストルメントパネルにメチャクチャ味のある古風なラジオがついているし、エンジンをかけるにはキーをシリンダーに差し込み捻らねばならないし、サイドブレーキだし、ウインドウ開閉は手動式である。これ以上、なにが必要だろうか?

 このVPはスズキの軽のボトムグレードであるから、当然、オールプラスチッキーでシンプル基調なのだが、誰も気にしない。気にするほうが病的、アンマッチである。たとえ安い材質であっても、トータルでバランスが取れていればよい内装に感じられる。スズキはこの辺りを上手に作り込むことに長けたメーカーだ。5AGSはシフトブーツが奢られるが、これは5AGSの素性がMTであることをなんとなく示しているかものようだ。

 カタログをみると、5AGSとは
マニュアルトランスミッションとオートマチックトランスミッションの利点を両立させた新トランスミッション「Auto Gear shift(AGS)」搭載車を設定。クラッチおよびシフト操作をコンピュータが最適制御することで低燃費に貢献します。また高速走行時はATに比べ、エンジン回転数を低く抑えるため静粛性も確保。マニュアルモードを選択すれば、MTのようなキビキビとした走りも思いのままです。更にクリープ機能やPレンジを採用しているので、操作性はATやCVTと同等。オートマチック限定免許で運転できるため、どなたでもスムーズな操作が可能です。

 とある。

 実際に試乗した感触から述べると、「マニュアルモードを選択すれば、MTのようなキビキビとした走りも思いのまま」は誇張である。マニュアルモードで変速すると、確かにDモード任せの変速よりはキビキビとはいえるのだが、MTと同じとまではいかない。ギアの切り替わりには、一呼吸置いた「間」を要する。逆に非マニュアルモードとしてのDモード(いわゆるAT運転)だと、ギアの切り替わりに一秒近い時間を要するので、変速のショックがでかいというよりは、変速時に空走しているような違和感を感じる。特に低速走行時はその違和感が顕著に分かる。これは、最近のトルコンATやCVTに乗り馴れていた人は吃驚するだろう。

 クラッチとシフトがオートメーションなだけで、正体はMTであるから、動力の伝達効率は高いし、トルコンATに比べると軽量で済み、低燃費も狙えるだろう。この辺のメカニズムを考えると面白いトランスミッションなのだが、興味のない人には「煩くて変速時に強い違和感のある出来の悪いオートマ」と捉えられるだけの結果になりそうだ。素早いシフトチェンジではないが、マニュアルモードで自分で変速するなら、ある程度は違和感をなくして走ることが可能だ。ただ、そこまでするぐらいなら、クラッチを踏んで左手でシフトチェンジすればいいじゃないかという結論に達してしまうのだが。「ATであればどうでもよい」ような人でなければ、5MTで思いのままにキビキビ運転する方が良いだろう。最高に惜しいのは、タコメーターがついていないことである。

 乗り心地は、流石に軽自動車相応で、路面からの突き上げは素直に尻に感じる。運転席や助手席は柔らかな、座布団のようなシートなのでマシだが、煎餅布団に等しいリアシートに座っていると、路面からの突き上げは堪える。ステアリングの操舵については特に印象深いことはない。ロードノイズは大きめであるが、車内会話は余裕で可能。なので、誰も気にしない。

 エンジンはNAで49馬力であるが、大人3人乗車であるにも関わらず、思いのほか走ってくれる印象。車両重量620kgが効いている。まさに“to add speed, add lightness” である。
 
 遮音材は必要最低限の使用に留まっているであろうから、加速しようと踏み込むと3気筒エンジンの音が車内に飛び込んでくる。スズキの実用性第一主義的エンジンであり、回してもスポーツさや官能性はない。やたら一速で引っ張っているジジイご年配の軽トラのような音である。とはいえ、常に騒々しい訳ではない。あくまでエンジンを回した時は煩いですよというだけのことである。回せばエンジンが大きな音を出すのは当たり前。車体が軽いといえど、速く走らせたいならエンジンを回さねばならない。でも、回せば煩くても速いですよ。そんなわけで、MTで1人乗車でブン回して乗ると実に楽しそうな予感がヒシヒシと伝わってくるのがこのVPである。

 もしこの車体にチューンした80馬力相当のエンジンを載せるだけで、ホットなモデルが生まれるだろう。往年のアルトワークスの後継車ではないようだが、三月発売予定のRSグレードが楽しみだ。きっとターボ武装でタコメーターとMTが用意されるだろう。



試乗先ディーラー
(株) スズキ自販北陸スズキアリーナ金沢東
突然の飛び込みであったにも関わらず、快い対応をありがとうございました。
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2015年01月19日

(試乗)GJアテンザ セダン XD PROACTIVE 4WD 6MT

GJATENZA_MT.jpg

まとめ
ATの方がアテンザというクルマに合致している

 最寄りのディーラーにMTの試乗車があったので試乗へ。MTの試乗車は乗れる機会に乗っておかないと二度と乗れなくなることが多い。

 試乗車のグレードは前回と同じでPROACTIVEだが、ボディ形状はセダンである。ちなみにPROACTIVEなるグレード名が何を意味しているのかは不明。果たして、トランスミッションがMTのアテンザはどのような印象をもたらしてくれるのだろうか。短時間の試乗であったが、感じたことを以下に記す。MTのシフトフィールとMTについての私見が主である。

 乗り心地やステアリングフィールに差異は感じられない。GHアテンザに比べると、揺れが少なく、頼もしい、より地に足のついた乗り心地で快適で、私好みの重めのステアに味付けされている。大柄なボディの割に見切りも悪くない。

 近年のマツダのリニア路線が生きており、パワーフィールとステアフィールはドライバーが操作した分だけ忠実に反応が返って来る感触に溢れている。入力に対する出力が自然な感じであるから運転してもクセがない。悪くいえばプレーンであるから分かりやすい刺激がないので、カタログ内容、ことに数値から想像するようなパワー感や機動性に期待すると裏切られる結果になるだろう。安全で快適で自然なドライビングフィールが、運転するドライバーに疲労感を与えないばかりでなく、運転する喜びにつながっていることを体感で理解できている人(そして、そのことをクルマに求める人)向けというべきか。私は、この方向で正解だと思う※1

 さて、GJアテンザが上質なサルーンを目指した方向性で仕上げてあり、それを高く評価している一方、トランスミッションがMTであることが、どのほどの差が感じられたかについて述べたい。

 ず結論から述べると6MTを積極的に選択すべきとは言えない。これはMC前のGJアテンザでも抱いた感想だ。商品力として判断すると6ATの方がアテンザらしくまとまっており、ブレがない。MTだとGJアテンザの走りが悪くなるとか、運転が更に楽しくなるか抱いた期待が大きく裏切られた、そういった理由からではない。単に「MTで乗らなくてはならないクルマでない」ということである。私個人に限った感想でいえば、ATで楽に乗りたいクルマだから、ということになる。世間の多くのクルマはMTの方がダンチに楽しいものだが(ATが走りの楽しさをスポイルしていることは多い)、GJアテンザではそう感じなかった。クルマのキャラクターにスポーツさがないこと、ディーゼルエンジンの豊かなトルクを活かした安楽さ、SKY-Driveの質の高さ、そもそもの車体設計が高いレベルで融合されているからだろう。従って「MT以外に乗ると突然、死亡する」とか「ATの操作が意味不明で逆に危険」とか「MTで意のままにパワーを操らないと気が済まない」とか、そういった性格を有するMTフリークでなければMTを選択する必要性がない※2

 まずクラッチを奥まで踏み切ったままスタートボタン(?)を押し、エンジンに火をいれる。この時にまず思ったのは、クラッチの踏みしろが長いことであった。クラッチはやや軽めで、これはアクセラXDと同じだろう。いかにトルクのあるSKY-Dといえど、半クラ発進はシビアエンストするのでアクセルを僅かに踏んで回転を煽ってクラッチをミートさせる。ミートポイントはちょうど中間にあって、ペダルに反力がやや軽いとはいえ、繋ぐのは難しくない。これもアクセラXDと同じである。過去のRX-8やマツダスピードアクセラに比べれば随分と素直である。なお、SKY-Dは調律で更に静かになったのか、遮音材が増えたのか、車内にいると本当に静かである。流石に停車から1速発進の際はディーゼルエンジンの音が耳に入ってくるが、それはガソリン車であっても1速発進の際にエンジン音が耳に入る点で同じである。巡行時はトルクを活かして回転数を低いままにできるから更に静かである。

 シフトフィールは新車同然の試乗車であったためか、ゲート間を移動する時に渋さがり、その際に発泡スチロールが擦れるような妙な感触があった。SKY-MTが謳う「スポーティなショートストローク」と「スッと吸い込まれるような…」感触はイマイチ実感できなかった。節度感は十分にあるが、あまりメカメカしさはない。シフト操作に要する力はやや軽めであり、クラッチの軽さと丁度の釣り合いが取られたバランス型。世にいるMTフリークを満足させるには刺激が弱いと思われる。

 GHアテンザに比べると、クラッチとシフト操作が軽めで扱い易いのは確かである。ただ、SKY-Dの豊かなトルクを意のままに操らんがためのMTたらんことを求めるには硬派さが不足している。もし私がGJアテンザを購入することになればATを選ぶと思う。それでもMTで、という人は他のスポーツに味を振ったクルマを新車中古問わず検討する方が幸せになれるのではないだろうか。MCで4WDが設定されそうなアクセラXDを待つのも手かもしれない。値段は凄いことになりそうだが。



(冷静に考えると気になる点)
・L Packageでないと電動シートがつかないのはちょっと…
・シフトレバーがやや離れた位置に在る気がした(腕をかなり伸ばした状態で操作している感覚)
・6速でもアクセルを踏まないアイドリング状態で巡行可能。エンジンブレーキによる速度減調整ができないのは怖い
・ディーゼルタイプを選ぶなら、坂道や起伏が豊かな試乗コースを走っておきたい




※1
私の乗るGHアテンザ25Zはこの方向性の意味で中途半端である。フラッグシップという割には上質さがもう一歩で、スポーツグレードである割にはパワーフィールが足りない。MTがラインナップされていてリアにウイングがついただけじゃないのか?と感じる。マツダにしても、およそ「スポーツ」などと冠したくはなかったのではないかと思う。良くいえば折衷的で悪くいえば中途半端。25Zの最大の魅力は、二代目アテンザ最上級グレードでMTがであることではなく、斜め後ろから車体を見た時に極めて美しいスタイルである。この点に限ってはGJアテンザに勝っている。

少し話は逸れるが、初代アテンザの実質上のスポーツモデルであったマツダスピードアテンザは目を見張る動力性能で尖っていたものの笑えるほど売れなかった。私はそう思わないのだが、市場はこの車を「中途半端なクルマ」と判断したのであろう。マツダがアテンザというモデルに尖ったパワーやスポーツは合わないと判断したと推測するが、結果として二代目のGHアテンザにはマツダスピードverは設定されなかったし、スポーツグレードは名ばかりのものになった。「アテンザにはスポーツは合わない」ということで、GJアテンザはスポーツさを全く主張していないし、スポーツグレードもない。言うなれば、上質な高級サルーン路線に完全舵切りをして立派なクルマに仕立てあげた。海外メディアが「マツダスピードアテンザ復活か」と記事にしていたことがあったが、これは飛ばし記事でありメディアのポジショントークである。マツダの持病である「業績が回復すると血迷った経営に走り社を傾ける」が発症すれば出るかもしれないが、マツダを応援する一人としてはやめて欲しいところだ。


※2
このご時勢、パーソナルなクルマにMTを求めるのはMTに特別な思い入れや期待を抱いているのが普通である。それはクラッチ操作やシフトフィールに官能さ求めたり、トランスミッションを操る動作がドライビングの質に強く響く趣味性の強いクルマに乗る場合であったり。要は「折角MTを選択するのだから…」選択に見合った見返りを期待するのが心理というもの。「単にATでないだけの理由としてのMT」では期待値に達しないわけで、その意味ではMTをラインナップするのは、メーカーにとってはむしろデメリットばかりだろう。下手なMTモデルは厳しく評価されるだけでなく、確実にATより売れないからである。それは自明なことだが、それでもMTモデルを用意するのはマツダの矜持を感じさせることから賞賛したい気持ちになる。他社はどんどんMTモデルを減らしているさなか、平然とMTを用意するのはクルマ好きへの強い訴求力となるだけでなくマツダのブランドになる。実際のところは、国内車も国外車も国内工場で生産するマツダにとってMTモデルをラインナップすることに特別なコストはかかっておらず、収益を度外視してまでMTモデルを用意しているわけではないだろうが。




今回のマイナーチェンジに於ける変更点はURL先を参照
「マツダ アテンザ」「マツダ CX-5」を大幅改良
 
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2015年01月14日

漫画感想「青山月子です!」第4話 別冊マーガレット2月号

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 今回の話は素晴らしいの一言。ストーリーへの細かなツッコミは抜きに、質量のある読後感に見舞われる。内容に感激したとか、温かな内容に微笑ましくなるとか、そうした路線ではない。バッドエンドでもなんでもないのに関わらず、妙に落莫としているからである。舌足らずな私は、どう表現したらいいものか、この複雑な心情を説明することができない。読後にここまでパンチがきたのは久しぶりである。

 いま思えば、高校生の頃は学年がひとつ違うだけで住んでいる階層が異なるぐらいの大きな差を感じたものであった。成人してしまえば、一つや二つの歳の差など全く意識さえせず交流するものだというのに、不思議なことだ。「外国では親しい仲であれば誰であれ、年齢差を気にせず交友をします」と知った時に信じられない思いをしたのは私だけではあるまい。幼い10代の若者にとっては、たった一年の違いが極めて大きな心理的隔たりとなりうるのである。これはまた、月子さんが作中、同級生にやたらと距離を置かれている理由にもなりうる。いくら記憶喪失で風変わりな言動をする人物であれ、学年三位の学業成績を修め、見た目も悪くない女の子があれほどまでにぼっちになるであろうか?

 ところで、湯木のじん先生の人物描写は、主要人物らであれモブであれ全体的に端整である。漫画的表現のひとつである「別の漫画から出張してきたかのような」明らかな不細工キャラは登場しない。悪くいえば描き分けが徹底していない。みんな美男美女だからである。主要キャラよりもモブキャラの方が魅力的に描かれる…ことは流石にないが(あえて力を脱いて描写して差別化している感じ)、作中の世界でどれほどの評価を受ける容姿であるかの判断がつきにくい。月子さんは常に垂れ目で表情の乏しい愛らしいキャラに描かれているが、ひょっとしたら「青山月子です!の世界」では、一種の知的障害者のような表情をしているのかもしれない。そうするとぼっちキャラであるのも合点がいくが、なんとも残酷な話だ。しかし、例えそうであったとしても、同級生が彼女を避けるのも無理のない話だ。クラスメイトの発言を引用するまでもなく、だれもが月子さん(他人)のことを考えて生きているわけではない。だから、月子さんに全てを合わせて行動する義理もない。それも、ひとつ歳上で風貌言動にクセがある同級生である。クラスメイトたちの態度は、一見して非人間的な冷たい連中に見えるだろうけれども、冷静に考えれば極めて自然である。

 そんな彼らの対になるキャラクタである加賀美くんは、相変わらず保護者的態度であるが、やや独占欲が見え隠れする心理がみえるので、恋慕感情直前に移行しつつある様子。そして、当の月子さんは、寂しさで心が風邪を引いたかのようになっている。今月号の月子さんを見ていると、その索漠さに胸が締め付けられる。月子さんは、気を使われたり優しくされて嬉しくなりたいのではない。ただ普通にみんなと仲良くあり、親しい友達がいて、自分を祝ってくれる恒常的な温かさが欲しいのである。遠足の昼食がチョコチップの菓子パンであり、最後、弱々しく加賀美くんの指を握る月子さんをみて涙腺が緩まぬ読者はおるまい。


まとめ
・ぎゅんたは湯木のじん先生を応援しています。
・「青山月子です!⑴」は2/25発売です。
・アンケートハガキを投函して座して待つべし。

 
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2015年01月12日

(試乗)GJアテンザ ワゴン アテンザワゴン XD PROACTIVE 4WD 6AT

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マイナーチェンジしたアテンザを見にマツダディーラーへ。
わずかな時間の試乗にすぎないが、感じたことを以下に記す。



 エクステリアの変更点は使用しているパーツの変更が主で、マイチェン前と大きく変わった印象は受けない。リアのコンビランプにLEDが使用されたのは格好良いが、夜間にどのように発光しているかは確認できなかった。

 アルミニウムメタリックの代わりの新色のソニックシルバーメタリックは、あまり映えたカラーには見えなかった。新型アテンザワゴンのボディカラーには、スノーフレークホワイトパールマイカかチタニウムフラッシュマイカが似合うのではないか。4WDだとヘッドライトの下にヘッドランプウォッシャーが装備される(LEDライトだと雪が熱で溶けないため)。動作させると象さんが鼻から水を出したような勢いのウォッシャー液が飛び出す。

 さて今回のマイナーチェンジによる変更点は実に様々あるようだが、目玉はXDに4WDがラインナップされたことだろう。ディーゼルターボの4WDでMTが選べるようになったからである。巨躯といって差し支えないボディサイズはさておき、レガシィB4のような商品力ではないか。現行のレガシィB4といえば、ボディサイズはこのGJアテンザとほぼ同一(全長×全幅×全高=4795×1840×1500mm)である上、CVTしか選べない。アイサイトというパッシブ・セーフティへの信頼感とAWD技術はスバルが他社より頭一つ抜けているが、デザインとMTを求めてこのアテンザを購入するユーザーは確実に出てくるだろう。ディーゼルでMTで4WDというのは、確かに車種が思いつかない。

 インテリアは結構変更があり、受ける印象が違う。ありていにいえば、より上質にフラッグシップモデルに相応しい雰囲気になった。柔らかく丸み持たせた上で立体的に組み合わさった造形になった。マテリアルも、ソフト素材とクロームを贅沢に使用し、ここぞのアクセントにピアノブラックを使用している。無論、目立たないところにはプラスチック素材が用いられているが、まさかそれに文句をつける従前のマツダオーナーはいないだろう。
 好みの問題だが、アクセラやMC後のCX-5に見られるカーボン調パーツが使用されていないのもセンスが良く好ましく感じる。ただし、エアコンパネル部分に限ってはゴチャゴチャと浮いているように感じる。ステアリングに用いられている本革の肌触りは変わらず良い。パーキングブレーキは、今回からCX-5共に電動パーキングブレーキになった。フット式でないだけでかなりマシだが、私を含め、マツダオーナーの多くは残念に感じる変更だろう。アテンザやCX-5にはスポーツ色は求められていないこと、電動式パーキングブレーキはいわゆる高級車の標準装備であることから採用となったのだろうが判然としない。

 SKY-D2.2のパフォーマンスには変更はないようだが、アイドリング時のディーゼルエンジン特有音は更に静かになったのではないか。車外にいれば分かるが、それでも静かなものだ。車内に入ってしまえば、神経質な人でもない限り特に気にならないだろう。どうやってここまで音を抑えたのか不思議なものだ。

 試乗車はATであるが、相変わらずSKY-Dとの相性が良く、上手に躾けられている感がある。アクセルを踏んでいくと、リニアに加速していくが、そのときの変速はキチンと分かるのにショックレスである。高トルクを歌うカタログ数値から想像する暴力的な加速やパワー感はないのだが(トルクが高くてに175馬力なので当然なのだが)、狙った通りの速度に即座に違和感なく合わせることの可能な、常に余裕を感じさせるエンジンになっている。これだとMTで乗るよりは、このATでゆったりと走らせて、余裕の動力性能を有する心地よさとして乗りたくなる。SKY-DRIVEは、Golf7 Trendlineを試乗した時のような、踏み込んだ瞬間から機械式直結性加速を味わえるほどのダイレクト感は有しないが、ATとCVTと2ペダルMTのいいとこ取りをした、実に日本人好みの「いいとこどり」トランスミッションで気に入っている。パドルシフトを用いた変速も不満を感じさせない、ほぼ瞬間的な速さで行える。残念なのは、Dモード中にギアが何速に入っているかが表示されないことだ。

 自分の乗るGHアテンザと比べると乗り味はドッシリとしている。ステアリングも程よく重く、しかも路面を掴んでいる感じが伝わってくるのが頼もしい。これは、高速道路を巡航させると快適で安楽で気持ち良さそうだ。車体はかなり大きいはずだが、あまりそれを感じさせないのは、いい車の証拠である。フロントタイヤを前方に移動させることで得られたスペースを利用した適正なペダルレイアウトは、あまりにも自然にドライバーにフィットすることで全く意識の注意に登らないのが逆に凄い。セールスマンは試乗前に、このペダルレイアウトについて説明しておかないと気づかれることがないので手間だろうなと思う。NDロードスターも間違いなくこのペダルレイアウトを踏襲してくるであろうことが楽しみだ(NCは窮屈だった)。

 このアテンザ、もし購入するならXD-4WDがベストパイではないか。そしてMTにすれば、市場の多くの車とは截然たる差が得られ、オーナーの満足度も高いだろう。ディーゼルで4WDでMTはなかなかいないからである。過去のレガシィB4 3.0R Spec Bのような妙な特別さを感じさせる存在になるのではないか。どのみち数は売れない点でも共通するだろうが、マニアには高く評価されるクルマという点も共通しそうだ。そういうことを考えると、MTのXD-4WDにも是非試乗してみたいものだが、果たして試乗車はあるのだろうか?


今回のマイナーチェンジに於ける変更点はURL先を参照
「マツダ アテンザ」「マツダ CX-5」を大幅改良

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2015年01月07日

さよならインテR

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 諸々の事情からDC5R(後期型)とお別れになった。クルマのキャラクタイメージとは裏腹に乗用車ライクに乗り回していただけであった。いつかサーキットデビューをしたいと考えていたが、実現できずじまいになってしまった。

 いまどきインテグラタイプRを中古で買おうとされる方は少なかろうし、変わり者の類となろうが、万に一つでも参考になるところがあれば嬉しいので、私なりに抱いていた感想を書こうと思う。
DC5R最終後期型、ワンオーナー、フルノーマル、無事故15万キロの個体であった。


【どのようなクルマか?】
いざとなれば後部座席に人を載せられ(4人マデ)
積載量も案外に確保されており
リアのウイングが少し派手で目立つものの、シンプル基調のスタイリッシュなスポーツクーペで
2L直4NAで220馬力を絞り出す赤ヘッドのK20Aを搭載し
回さないでのんびり乗る限りは燃費も悪くない(ハイオク指定・12〜14km/ℓ)

クルマである。

 性格的にサーキットを攻めるFF車だが、案外に乗用車ライクに、自家乗用車然と乗りこなすことが可能だ。とはいえ、一般的な乗用車を乗り続けてきた人が乗ったら「ずいぶんとスパルタンなクルマだな」と感じるのは必定、さすがに万能キャラではない。従ってマルチユースなクルマが欲しい人は検討に値する車ではない。なお、タイプRといえばチャンピオンシップホワイトの印象が強いが、案外に青色や黒色も似合う。

 ステアリングの重ステ具合に比べクラッチとシフトはやけに軽く感じる。コンマ一秒でも素早くシフトチェンジするためのセッティングか。シフトゲートの感触は緩く、硬質感のあるタッチとはいいがたい(流石に15万キロオーバーなので致し方なし)。少なくとも、クラッチとシフトフィールに関してはあまりスパルタンではない。拍子抜けするほど扱いやすいミッションである。


【どんな人が乗ると幸せか?】
・VTECが好き
・ホンダのFFスポーツが好き
・車内がメカニカル音でうるさくても気にしない
・実用性を特別に重視しない(ある程度あってくれれば良いとする)
・維持費が少し高くても構わない
・豪雪地帯に住んでいない


 搭載される名機K20Aは、5800rpmからハイカムに切り替わり、そこからレブリミットまで怒涛のパワーを発揮する。これは昨今の小排気量ターボやハイブリッド前世の時代においてはかなり貴重なエンジンである。220馬力のパワフルなエンジン、というよりは、精緻に組み上げられた高出力型エンジンの印象が強い。高性能エンジンを載せたクルマに乗っている特別感を常に感じられるいはエンスーにはこたえられないところだ。

 アイドリング音は大きい。特に冬場のエンジン始動直後は2000rpm前後をしばらく推移するのだが、車内車外ともに騒々しいので近所迷惑になるかもしれない。回転数が落ちてきても、アイドリング音はやや大きめ。エンジンの存在感が優先されていると思えば良い。うるさいと言えばうるさいのだが、エンジンを回せば熱い音に包まれる幸福が約束されているのでトレードオフである。逆に静かだったら気分が乗らないだろう。いずれにせよ、ロータリーエンジンと同じでクルマ好きなら一度は味わっておきたいエンジンであろう。

 インテグラタイプRはFFであるから、昨今のAWDターボモデルに比べれば絶対的な加速性能に劣る。直線番長ではないしコーナリングもアンダーがつきまとうとされている。確かに、以前乗っていたNC1ロードスターに比べると、コーナリングが軽快で楽しい感じに劣るし、曲がらない感じはする。だからと言って遅いとかツマラナイという感じはしない。NC1は誰でも気軽に手軽に気持ちの良いコーナリングが可能だが、DC5はより硬派である。FFの特性を知り尽くした腕の立つドライバーが乗れば、公道上であれど無類の強さを発揮できるだろう。硬派なFFに乗りたいのであれば、インテグラタイプRは魅力的な選択のひとつだ。そして、ドライバーの腕次第で想像もつかないほど(FFらしらぬ)速く走らせられるポテンシャルがある。私はたいして乗りこなしていなかったので、宝の持ち腐れであったのだ。

 後部座席は閉鎖的な空間であるが、大人二人はなんとか乗れる。比較例を挙げるなら、RX-7やS13シルビア、RCZよりは広い。とはいえ、いわゆるワンマイルシートよりマシ程度にすぎず、前列シートの人はシートを前に出すようにしたい。閉所恐怖症の人には厳しい。なお、リアハッチのガラス越しの直射日光はかなり苛烈なので、夏場に後部座席に座ると後頭部を灼かれる拷問空間と化す。低めの車高と2ドアであるがゆえ、身体の不自由な人は乗り降りがしんどく、ウケが悪い。

 リアハッチを開くと、かなりの容積を誇るラゲッジルームが現れる。底が深いのが効いている。たいていのものはポイポイ詰め込めるが、更にリアシートを前に倒すことでより積載量が増す。なお、トノカバーがないとリアハッチのガラス越しに内部がモロ見えなので、覗かれて都合の悪いアイテムは置かないようにしたい。リアハッチの傾斜とウイングの存在のため後方視界は悪い。寒冷・積雪時に重宝するリアガラスの電熱線の効きが弱い。

 維持費は、ハイオク指定、エンジンオイル交換費用、任意保険料が少々お高くつくので覚悟を決めよう。任意保険料が高いのはこの手のクルマの宿命だ。


【このような人にはオススメしない】
・VTECの官能性に過度の期待を抱いている
・超絶なスパルタンさを期待している
・任意保険に加入しない/できない
・公道での速さを求める
・仕事で用いることもありうる
・チャイルドシートを頻繁に使うことを想定している


 VTECには刺激と官能が満ちていたのでエンスーたちを喜ばせてきた。カムプロフィールを超えた後のエンジン音の大きな変化と絞り出される怒涛の高出力の表情の変化は頬を緩ませずにいられないものだ。以前に、インテRを代々乗り継いできたオーナーに聞いた話だが、このDC5RのVTECは、初期の頃のVTECに比べると切り替わりの演出がマイルドになっているとのことである。動画でみると、確かにDC2は切り替わりの変化が劇的だ。


※音量注意

 これに比べると確かにDC5Rのカム切り替え時の音の変化はマイルドである。音の切り替わりに過度の期待を寄せるのはやめた方がよかろう。マフラーを交換したりすれば別かもしれないが…
 ちなみに公道上でハイカムに切り替えてまで走らなければならないシチュエーションはほぼ存在しない。高速道路への合流時や追い越し時に切り替えて遊ぶかどうかというところ。フツーに乗っている分には、VTECの官能性を感じる機会がない。ちなみに6速で100km/h巡航時の回転数は約3000rpmとなるので、高速道路では走行車線をゆったりと流すように走ることになる。ハイカムに入れて乗り回していると免許が何枚あっても足りない。やはりサーキットで存分に走らせるクルマである。次のオーナーに愛されることを祈るばかりだ。
 
posted by ぎゅんた at 02:16| Comment(1) | TrackBack(0) | クルマ(なんでも) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする